2024年11月1日の道交法改正により、これまでは罰則対象ではなかった「自転車の酒気帯び運転」に新たに罰則が設けられました。当記事では、そんな罰則の内容や罰則強化の背景のほか、同じく罰則対象になった「自転車のながらスマホ運転」についても解説します。
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1. 自転車の酒気帯び運転が罰則対象に!
「酒気帯び運転」とは、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上、または呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールが検出される状態で運転することを指します。
一方で、「酒酔い運転」は酩酊状態で運転することを指します。自動車においてはどちらも罰則が設けられている酒気帯び運転と酒酔い運転ですが、自転車の場合はこれまで酒酔い運転のみが罰則の対象であり、実は酒気帯び運転には罰則はありませんでした。
しかし、令和6年(2024年)11月に道路交通法が改正され、自転車の酒気帯び運転にも罰則が設けられることになりました。また、酒気帯び運転のおそれがある者に酒や自転車を提供するといった行為も、「酒気帯び運転のほう助」として罰則の対象となっています。
罰則強化の背景
自転車の酒気帯び運転の罰則が強化された背景には、昨今の自転車の交通事故の増加があります。警察庁の統計によると、令和5年(2023年)の全交通事故に占める自転車関連事故の割合は2割を超え、令和3年(2021年)以降増加を続けています。
また、自転車が過失割合の高い「第1当事者」となった交通事故では、自転車が酒気帯び運転をしていた場合の死亡・重傷事故率が、飲酒していない場合の約1.9倍にのぼるというデータもあります。
このように、自転車による交通事故が増加する中で、酒気帯び運転を含む飲酒運転は事故を多発し、重大化させる大きな要因となっています。そのため今回の罰則強化により、自転車の運転者には飲酒運転の危険性を再認識し、より一層防止に努めることが求められているのです。
2. 自転車の酒気帯び運転に関する罰則内容
ここからは、新たに罰則対象になった行為と、罰則の内容を詳しく解説します。
酒気帯び運転
自転車で酒気帯び運転をした運転者に対しては、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、アルコールの影響で正常な判断ができない状態で自転車を運転した際は引き続き「酒酔い運転」の罰則が適用され、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に、酒類を提供すること
酒気帯び運転のおそれがある者に対して酒類を提供し、その者が実際に自転車の酒気帯び運転をした場合には、酒類の提供者に対して2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に、自転車を提供すること
酒気帯び状態で運転するおそれがある者に対して、自転車を提供することも罰則対象となります。提供された者が実際に酒気帯び運転をした場合、自転車の提供者には3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
自転車の運転者が酒気帯び状態と知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること
運転者が酒気帯び状態であると知りながら自転車に同乗して送らせた場合は、同乗者にも2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになります。
3. 「ながらスマホ」運転にも注意!
自転車の酒気帯び運転とともに今回の法改正で罰則の対象となったのが、自転車で走行中にスマートフォンで通話したり、画面を注視したりするといった「ながらスマホ」運転です。
具体的には、自転車の運転中(停止中は除く)に下記の行為を行った場合は6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。また、その行為によって事故を起こすなど、交通の危険を生じさせた場合には1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
- スマートフォンでの通話(ハンズフリー装置を併用する場合などを除く)
- スマートフォンの画面を注視すること
これらの行為は、運転中に電話がかかってきた際などにとっさに取ってしまいがちな行動でもあるため、自転車を運転する際には注意が必要です。
4. 監修コメント
2024年12月は、忘年会シーズンということもあり、各地で自転車も対象にした飲酒検問が実施されました。2024年12月6日の夜に都内118か所で実施された飲酒検問では、自転車による飲酒関連の検挙数は20件にのぼりました。
自転車の酒気帯び運転に対する処分は、自動車の運転免許に影響を及ぼすこともあります。実際に北信地域では、自転車の酒気帯び運転で検挙された男性が、車でも交通の危険を生じさせるおそれがあるとして、6ヶ月の運転免許停止の処分を受けました。自転車においても「飲んだら乗るな」を徹底しましょう。